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メディケア・PBS・高齢者ケアに大幅改定

【ACT3日】   オーストラリアでは11月1日から、国の医療制度を支えるメディケア(公的医療保険)とPBS(医薬品給付制度)、そして高齢者ケア制度に関する大幅な変更が実施された。今回の改定は、医療費の負担軽減や医師の診療体制強化、女性の健康支援、さらに高齢者ケアの透明化と安全性向上を目的としている。

政府は、診察時の自己負担をなくす「バルクビリング(無料診察)」制度の拡充に踏み切った。これまで多くの診療所では、政府から支払われるメディケア報酬だけでは経営が難しく、患者が差額負担を支払うケースが一般的だった。今回の改定では、政府が医師に支払う報酬を大幅に引き上げ、より多くのクリニックが完全なバルクビリングに移行できるよう支援する。

例えば、都市部での標準的な診察(6〜20分)の支払いは、これまでの42.85豪ドルから69.56豪ドル(62%増)に上昇。遠隔地域では86.91豪ドル(103%増)となる。

また、これまで16歳未満の子どもやコンセッションカード保持者(低所得者など)に限られていた「バルクビリング・インセンティブ(BBI)」の対象を、すべてのメディケア利用者に拡大。これにより、無料で医師の診察を受けられる機会が全国的に広がる見通しだ。

医療制度改革の一環として、避妊治療の負担軽減も進む。新たに膣内リング型避妊具「ヌーバリング」がPBS(医薬品給付制度)に登録され、政府補助の対象となった。これにより、これまで年間270豪ドル以上かかっていた費用が、1処方あたり31.60豪ドル(一般)または7.70豪ドル(コンセッション)に引き下げられる。1回の処方で3か月分をカバーでき、費用は実質的に半額に。さらに、2025年1月からは最大25豪ドルまで減額される予定だ。

2024年に成立した新「高齢者ケア法(Aged Care Act 2024)」も11月1日から施行され、介護費用の負担区分や安全対策が大きく見直された。政府は、高齢者施設での臨床ケア(医療・看護)費用を全額負担する一方で、食事・清掃・洗濯などの日常生活支援や非臨床ケアに関しては、所得に応じた自己負担を導入。負担額は1日最大105.30豪ドル、または生涯上限135,318豪ドルに設定された。

また、在宅介護制度も新プログラム「Support at Home」に一本化。旧制度「Home Care Packages」などを統合し、年間約11,000〜78,000豪ドルの8段階で支援金が割り当てられる。利用者は、臨床サポート(看護・理学療法など)、自立支援サービス(個人ケア・送迎・レスパイトなど)、日常生活支援(掃除・庭仕事・食事など)の3カテゴリーから、ニーズに合わせて支出を配分する仕組みとなる。

さらに、法改正ではホイッスルブロワー(内部告発者)保護制度を強化。高齢者本人や家族、職員が違反行為を通報した場合、匿名での報告が可能となり、報復などの不利益を受けないよう法的に守られる。

今回の一連の改革について、政府関係者は「国民が経済的な負担を感じずに必要な医療・介護を受けられる環境を整えることが目的」としており、医療アクセスの平等化と高齢者支援の質向上を目指す取り組みが本格化している。

ソース:news.com.au – All the big changes to Medicare, PBS and Aged Care from November 1 explained

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