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看護師に処方権限付与へ 医療アクセス改善に期待

【ACT5日】   オーストラリア全土の登録看護師が、医薬品を処方できるようになる新制度が導入され、これにより医療へのアクセスが迅速化し、待ち時間の短縮が期待されている。

この歴史的な制度改正により、何万人もの登録看護師が医薬品処方のための研修を開始できるようになった。今回の改革は、オーストラリア医療制度における数十年ぶりの大きな変化とされ、人手不足の緩和、過重労働にあえぐ開業医(GP)の負担軽減、そして特に地方や遠隔地に住む患者の医薬品アクセス改善を目的としている。これまでは、医師、歯科医師、一部の薬剤師、ナースプラクティショナー(NP)、および認定助産師のみが合法的に薬を処方できた。

オーストラリアの一次医療は現在大きな負担を抱えており、多くの患者がGPの診察を受けるまでに長い時間を要している。この改革により、長期間同じ薬を服用している安定した患者が再処方を必要とする場合などでも、GPの予約を取る必要がなくなる。また、地方在住者にとっては、地域で迅速に薬を受け取れるようになり、不要な遅延や長距離移動がなくなる。

指定登録看護師(Designated Registered Nurse Prescriber)は、認定医師などの権限を持つ臨床従事者と「処方契約(prescribing agreement)」を結び、どの薬をいつ処方できるかが明確に定められる。処方を希望する看護師は、構造化された教育課程を修了し、認定を受ける必要がある。認定後は、薬局販売薬、薬剤師専用医薬品、処方薬、さらにはモルヒネやフェンタニルなどの厳重管理薬の一部にまで処方・供給が可能となる。

ただし、一部の医療専門家からは、スケジュール8(モルヒネやフェンタニルなど)薬の処方に関して懸念も出ている。オーストラリアGP学会のマイケル・ライト会長は、「処方範囲の拡大は、ケアの一貫性を損ねる可能性がある」と警告した。

2025年1月には、オーストラリア看護・助産認定協議会(ANMAC)が、新しい教育基準を発表。すでに4つの教育機関が申請を行っており、2026年初頭に最初の学生が学び始め、同年半ばには初の卒業生が誕生する予定だ。制度は段階的に導入され、2026年には最初の処方看護師が誕生する見込み。初年度には数百人が研修を開始し、数千人が新たな処方資格取得に向けて動き出すとされる。

ソース:news.com.au – Nurses gain prescribing powers: What it means for patients and GPs

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