【ACT29日】 オーストラリアの人権トップが、移民をめぐる議論の中で人々が「悪者扱い」されているとして懸念を示し、政治指導者に対し発言に注意を払うよう警告した。
オーストラリア人権委員会(AHRC)の委員長であるヒュー・デ・クレッサー氏は、雇用の不安定化や技術革新が、反移民的な言説の高まりを招いていると指摘。29日、ナショナル・プレスクラブでの演説でこうした問題に言及した。同氏は、移民政策や受け入れ規模についての議論自体は必要としつつも、「議論がしばしば移民を悪者にし、分断や人種差別を助長している」と批判した。
また、先住民の伝統的な土地所有、ヨーロッパ人の入植、そして白豪主義の終焉といった歴史的背景を踏まえ、「自由や法の支配といった人権の価値」を基盤に据えた議論の重要性を強調した。さらに、現行の移民法においてもビザの拒否や取り消しに関する政府の権限はすでに非常に広範であり、「これ以上の権限強化がどのように可能なのか疑問だ」と述べた。
同氏は、オーストラリアにおける反移民的な風潮の高まりを、世界的なポピュリズムの台頭と関連付け、「雇用不安や技術変化への不安、地方に住む人々の取り残され感といった問題が背景にある」と分析した。社会の結束を強めるには格差の是正が不可欠だとし、「社会の分断を懸念する一方で、それをあおるような発言をしてはならない」と政治家に対して警鐘を鳴らした。
演説ではさらに、人種差別の増加や民主主義への信頼低下、格差拡大によって、オーストラリア社会の結束が揺らいでいると指摘。「国際的な人権義務の履行でも遅れを取っている」と警告した。「オーストラリアは安全で安定し、豊かな国だが、その恩恵は平等に行き渡っていない。分断や気候変動、不平等、急速な技術変化などがその基盤を脅かしている」と強調した。
また、平和的な抗議活動を不必要に制限する法律が導入されていることにも懸念を示し、「こうした法律は憲法上の政治的表現の自由を侵害していると裁判所で繰り返し判断されている」と指摘した。さらに、報道の自由においても他の民主主義国に遅れをとっているとし、政府への不信感の高まりが世界的な傾向と一致していると述べた。
人種差別についても、「社会の結束における重要な問題」とし、先住民やユダヤ人、イスラム教徒、アラブ系、パレスチナ系、イスラエル系コミュニティに対する差別の増加を指摘。「人種差別を常態化させてはならない」と強く訴えた。また、最近の暴力事件やテロ関連の疑いのある事案を例に挙げ、「少数派を守れないとき、それは国家としての失敗だ」と強調した。
同氏は政府に対し、国家的な反人種差別枠組みの実施に向けたタスクフォースの設置を求めた。最後に、人権保護を強化するための解決策として、国内法に人権を明記する「人権法」の制定を提案。「国際社会での約束が国内で十分に反映されていない。人権保護の仕組みには穴がある」と述べ、その必要性を強調した。
ソース:news.com.au – Aussies ‘demonised’ by immigration debate, leaders need to ‘choose their words’: AHRC