【VIC25日】 メルボルン各地のコミュニティセンターでは毎週、多くのオーストラリア人が講義室に集まり、新しい知識やスキルの習得に励んでいる。しかし、そこにいるのは一般的な大学の学生とは大きく異なる顔ぶれだ。試験も宿題もなく、40歳未満の学生は一人もいない。教室を埋めるのは主に50歳以上の人々で、学び直しやスキル向上を目指している。
この取り組みは「第三世代大学(U3A)」と呼ばれ、1973年にフランス・トゥールーズでピエール・ヴェラスによって創設された。その後1984年にオーストラリアに導入されると、急速に広がった。VIC州の代表アニー・グリッグ氏は、「フランス型ではなく英国型を採用し、形式的な授業ではなく会員同士が知識や情熱を共有することに重点を置いている」と説明する。
現在、U3Aには4万4000人以上が参加しており、VIC州では平均年齢は74歳。会員の約半数が71歳から80歳だが、40代半ばから90代まで幅広い世代が学んでいる。
国内102か所の学習センターでは、数千人が新しい知識の習得や理解の深化を目指している。中には職場復帰を視野に入れ、デジタルスキルを学ぶ人もいる。約5000の講座が用意されており、特に人気なのは運動、芸術、語学、デジタルスキル分野だ。グリッグ氏は「デジタル分野は個別指導が重要で、自信を高めるために必要だ」と述べる。
一方で、生活費の高騰により退職のあり方も変化している。オーストラリア統計局によると平均退職年齢は57.3歳だが、2025年の調査では3人に1人が60代でも働き続けている。2003年には61〜64歳の女性の約71%、男性の約半数が退職していたが、2025年には女性41%、男性27%まで低下した。
キャリアカウンセラーのジョー・ウィンチェスター氏は、こうした変化を「意識の転換」と表現する。「かつては退職は仕事の終わりと考えられていたが、現在では新しいことを始める機会と捉えられている」と指摘する。65歳以上で働く人は約76万人にのぼり、2022年から20%増加、1995年の統計開始以来最多となっている。
U3Aのような学習の場は、スキル維持や再就職の準備を支えている。資格は取得できないものの、ボランティアや運営活動を通じて実践的な能力を高め、それを地域活動や仕事に生かす人も多い。また、再び学ぶ理由は経済的な事情だけではない。ウィンチェスター氏は「人々は目的意識や社会とのつながり、貢献し続ける機会を求めている」と述べる。
さらに、高齢者の学び直しは従来の大学教育ではなく、より実践的で就業に直結する分野に向かっている。職業資格、デジタルスキル、会計、医療事務、地域サービス、AIリテラシーなどがその例だ。ただし、十分な検討をせず高額な資格取得に投資すると、かえって負債を抱えるリスクもあると警告されている。
U3Aでは講座が終わればまた新たな講座が始まる。期間も1日から数年に及ぶものまでさまざまだ。一般には大学と誤解されがちだが、ここで得られるのは資格ではなく、新しいスキルと人とのつながりだとされている。
ソース:news.com.au – ‘Mindset shift’: Older Aussies flocking back to school as retirement rates plummet