【ACT17日】 オーストラリアの冬季スポーツ選手と科学者らで構成される団体は、地球温暖化によって縮小する国内のアルプス地域を守るため、政府に対策強化を求めている。
23歳のモーグルスキー・オリンピック代表ジャクソン・ハーベイ氏は、アメリカ人の父とオーストラリア人の母のもと、米コロラド州の山岳地帯で育った。幼少期の思い出の多くは雪山で過ごした日々だが、地球温暖化によって、そうした冬の風景が将来失われることを懸念している。現在、ハーベイ氏は科学者や冬季スポーツ選手による団体「プロテクト・アワ・ウィンターズ(POW)」とともにキャンベラを訪れ、国全体でアルプス地域への気候変動適応計画を策定するよう政治家に働きかけている。
2023年にオーストラリア代表チームへ加わるため移住したハーベイ氏は、2015年には交換留学生としてNSW州ジンダバインで過ごし、ペリッシャー・リゾートの有名なモーグルコース「トッパズ・ドリーム」で練習していた。しかし現在は状況が大きく変わった。「代表入りしてから同じコースで練習しているが、この4年間、国内最大のモーグル大会は毎年、雨や強風といった異常気象の影響でコースが短縮されている。雪質が悪化し、ジャンプ台も崩れてしまうため、安全に大会を開催できない」と語った。
オーストラリア・アルプスの平均気温は20世紀半ば以降約2度上昇し、その結果、積雪量は約30%減少した。積雪シーズンの短縮は観光業に大きな打撃を与え、地域経済にも深刻な影響を及ぼしている。
フリースキー選手で冬季スポーツ解説者のミア・レニー氏は、スノーウィー山脈西側のカブラマラで育った。彼女は「子どもの頃は冬になると玄関を雪かきして開けるのが当たり前だった。今の子どもたちにその話をすると、まるで外国の話のように聞こえる」と話す。
両親がスキーパトロールを務めていたセルウィン・スノーリゾートではスキーを始めたが、2019年の森林火災で施設は焼失。その後再建されたものの、十分な降雪がなく、スキーシーズン自体を開催できない年もあるという。レニー氏は、「この問題は誰にも否定できない。冬は年々短くなり、降雪量も減り続けている。現実を直視してほしい」と訴えた。
国家気候リスク評価の主任執筆者である気候科学者アンドリュー・ワトキンス博士は、気温上昇によって本来雪になるはずの降水が雨へ変わっていることが最大の問題の一つだと指摘する。通常、スキーシーズンには3~5回の大雪があるが、今シーズンはその一部が雨になってしまったという。
博士は、影響はスキー場だけにとどまらず、水資源や農業、さらには先住民文化にも及ぶと警鐘を鳴らした。マレー・ダーリング川流域へ流れ込む水のおよそ29%は高地から供給されており、高山地域の変化は広い範囲へ影響を及ぼす。また、この地域は数万年にわたり先住民文化の一部でもあり、その価値も危機にさらされているという。ワトキンス博士は、現在は各州や関係機関の取り組みがバラバラで、州政府と連邦政府が連携して進める統一的な仕組みが欠けていると指摘した。
社会科学者ルビー・オルソン氏も、適応策そのものは各地で進められているものの、NSW州、VIC州、ACTをまたぐ包括的な国家計画が必要だと述べた。私有地所有者も含め、連邦政府が全体を調整する役割を担うべきだとしている。
POWが提案する国家アルプス適応計画は、グレートバリアリーフなど環境的に重要な地域で実施されている保全計画と同様の仕組みを目指している。ハーベイ氏は、「私が求めているのは、エリート選手への同情ではない。将来の世代の選手たちが公平に金メダルを目指せる環境を残したいだけだ。誰もがオーストラリアのアルプス地域の素晴らしさを体験できる未来を守りたい」と語った。
ソース:news.com.au – ‘Open your eyes’: Olympic athletes pressure parliament to protect shrinking Aussie alpine regions