【ACT22日】 オーストラリア薬品・医薬品行政局(TGA)はこのほど、アルツハイマー病治療薬ドナネマブ(製品名キスンラ:Kisunla)を承認した。同薬は、脳内のアミロイド斑を除去することで、患者の認知機能の低下を遅らせる効果がある。
メルボルン在住のフランク・フレスキさん(77)は、この治療薬の臨床試験に参加した。試験を終え、「アミロイドを標的とする治療にアクセスできることは、自分の人生や自分に起こることを、少しは自分でコントロールできるということを意味している」と述べ、希望を持つことが出来たと話した。
同薬は、米国の大手製薬会社イーライ・リリー社が製造し、アルツハイマー病の早期段階における新しい治療法として、25年ぶりの快挙とみなされている。アルツハイマー病は死に至る神経変性疾患で、認知症の最も一般的な原因となっている。国内では約60万人がこの病気と闘っており、170万人が患者の介護に関わっている。
さらに、2024年時点でのアルツハイマー型認知症による経済的損失は81億ドルと見積もられており、2050年にはこの数が倍増すると予測されている。
シドニー拠点のアルツハイマー専門家のゴンスキー教授は、治療が上手くいけば初期の患者は認知機能をさらに2年間維持することが可能になると説明。ただ、治療は病気の進行を遅らせるもので、治癒を目的とするものではないと述べた。患者は月に1回、点滴によって薬を投与される。
イーライ・リリー社は、ドナネマブを医薬費給付制度(PBS)に含めるよう申請する予定で、今年7月に諮問委員会が審査する予定だ。民間での治療代金は1回の注射につき約4,700ドルとされている。
ソース:news.com.au-TGA approves Eli Lilly drug Kisunla in boost for dementia patients